村のおばちゃんとの、人生観がひっくり返るような体験を経て。
僕にはある想いが、ふつふと湧いてきた。
それは、「この人生観が変わる体験を、1人でも多くの人に味わってほしい」という想いだった。
事業という持続可能な形で、おばちゃんたちの生活が楽になるような形で、どうにかして再現できないだろうか。
そう思ってから試行錯誤した結果、「ソーシャルリトリート」という事業を思いついた。
▶︎https://home-to-home.jp/
コンセプトは「ウルルン滞在記×自分を見つめ直す旅」。
ネパールの村でホームステイをする中で、ゆっくりと流れる愛に溢れた時間の中で、自分の人生を見つめ直す。
そんな時間をつくることが、ネパールの村の発展にもつながり、社会貢献までできてしまう旅だ。
2年間のネパールでの生活を経て、村のおばちゃんたちとの関係性があるからできる、まさに自分にしかできない仕事だった。
2年間のボランティア活動がちょうど終わりを迎え、独立して生きていくと決めた僕は、この事業を形にしていくことにした。
とはいえ、僕はもともと会社員で、起業経験はない。
そんな僕が、お客さんが日本からネパールに来る形の「ソーシャルリトリート」で起業する。
それだけで、生活できるだけのお金を稼ぐのは、さすがに無謀すぎると思った。
そこで「ソーシャルリトリート」だけでなく、複業でビジネスをしていくと考えた時に、僕には2つほど頭に浮かんだことがあった。
1つは、アフィリエイト。
興味がないことはなかったけど、もともとずっとブログで発信を続けていたので、そんなに難しくないと思ったのが理由だった。
そして、もう1つはコーチングだった。
実はネパールに来てから一番後悔したことが、日本でコーチングをもっと学ばなかったこと。
何より、おばちゃんたちから教わり、僕が心から伝えたい「存在しているだけで価値がある」という考えは、
実は、僕がやりたいことに気づいた、あの3日間のコーチングのワークショップで教わったことそのものだった。
ネパールでの体験とコーチングがバッチリ結びつき、本当にコーチングが仕事になったら最高だと思った。
というわけで、アフィリエイトとコーチングの2つの案が出てきたけど、日本に帰国してほぼニート状態で暇だったので、
どちらかに絞るのではなく、どちらもやってみることにした。
やってみると、2つの間には明白な違いがあった。
アフィリエイトは、ブログのアクセスがあったので、すぐに3万円ほどの収入が生まれた。
ただ、ありがたさを感じたのと同時に、猛烈な違和感を感じた。
それは、このお金が、誰のどんな喜びの対価なのかが全く見えなかったからだ。
それでも、生活していくにはお金が必要だよね。
そう自分に言い聞かせて、その違和感を感じないようにして進めても、全然伸びなかった。
お金をもらえたら嬉しいけど、もらえないと全然満たされなかった。
だから、アフィリエイトだけで生活している人にコンサルまでお願いしたけど、それでも続けられず、収益は上がらなかった。
10万円くらいはまあ稼げるだろうと思っていたのに、収入はたったの月3万円。
正直、焦りに焦った。
一方、コーチングはというと、アフィリエイトに感じた違和感は全く感じなかった。
それどころか、目の前の人が少しでも表情が変わっていくところが、はっきりと見れて、とても気持ちがよかった。
正直、一銭もお金にならなかった。
それでも、とても満たされていた自分がいた。
だから、 悩んでいる友達に1人ひとり、声をかけて力になりたいと伝えた。
そして、それぞれの悩みや困りごとを聴き、役に立てるように一生懸命相談に乗った。
当然、コーチングの腕はなかったので、悔しさを味わう方が圧倒的に多かったけど、それでも感謝までしてもらえて清々しい気持ちになった。
コーチングはやっぱり面白い。
でも、まだまだ技術がない。
もっともっとうまくなって、役に立てるようになりたい。
そんな想いがふつふつと湧き上がってきた僕は、会社を辞めるきっかけになった、あのワークショップの続編に参加した。
その3日間のワークショップでは、参加者同士でペアを組んで、コーチングを練習することがメイン。
いろんな人とコーチングをやらせてもらったけど、2日目に練習させてもらったのが、外資系に勤める40代のかっこいいお兄さんだった。
お兄さんとは結構波長も合って、すごく楽しく練習をさせてもらい、自然と休憩時間に話すようになった。
「けいくんはさ、なんでここに来たの?」
そう聞かれた僕は、自分がコーチングによって会社を辞めて人生が変わったストーリーを話した。
そして、自分がコーチングを本気で仕事にしたいと思っていることを、自分でも驚くほど熱く語った。
話し終えた後、びっしょりと手汗をかくほどだった。
熱く語りすぎて引かれたかと思ったけど、お兄さんは黙々と僕の想いを受け止めてくれた感じがした。
そうして迎えた最終日の3日目。
僕の隣の席にやってきたお兄さんは、ひとしきり雑談を終えた頃に、ふと僕にこんなことを言ってくれた。
「けいくんってさ、コーチングを仕事にしたいんだよね。よかったら俺がクライアントになるよ」
めちゃくちゃ嬉しかった。
でも、予想だにしない展開すぎて、信じられない展開すぎて、全くリアクションができなかった。
それでもこのチャンスは、絶対に逃したくなくて、慌てて連絡先を交換してコーチングの日程を決めた。
そうして後日、僕は初めてコーチングでお金をいただいた。
金額は、たったの3,000円。
会社員時代のお給料の300,000円より、アフィリエイトで稼いだ30,000円より、0は1つも2つも足りない。
でも、その金額を遥かに上回る感動と喜びが、そこにはあった。
まるで美しい初日の出を見たような、内側から全身が震えるほどの深い感動に包まれ、その姿を見た妻も、感動して泣いていた。
そうして、僕はコーチングにのめり込むようになった。
そして、ありがたいことに、なんとか軌道に乗り始めた頃、これまた予想だにしない展開が待っていた。